コーヒーブレイク

エッセイ『手品の周りで』

うえまつまさゆき

ご感想・ご意見などいただけましたら こちらへ

エッセイ集『手品の周りで』出版のお知らせ

YMGホームページに連載された「手品の周りで」が本になりました。 
マジックとその周辺に関する雑学・無駄ばなし・失敗譚などあれこれと…。 
ご興味のある方はどうぞ。 

『手品の周りで』 植松正之 ¥1800(税込) 送料¥200
  
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2009/7/20 更新


目次

  • その1「へたくそ」  
     (2007/1/8)
  • その2「修験道」  
     (2007/1/15) 
  • その3「それ、知ってる」  
     (2007/1/22) 
  • その4「マジシャン」  
     (2007/1/29) 
  • その5「天狗の葉団扇」  
     (2007/2/5) 
  • その6「デンスケ賭博」  
     (2007/2/13) 
  • その7「客へのプレゼント」  
     (2007/2/19)
  • その8「レコード手品」  
     (2007/2/26) 
  • その9「卑弥呼太夫」  
     (2007/3/5)
  • その10「魔法のお城」  
     (2007/3/12) 
  • その11「さとり」  
     (2007/3/19)
  • その12「戦国のマジシャン」  
     (2007/3/26)
  • その13「玉手箱」  
     (2007/4/2)
  • その14「犬は忘れ物をしない」 
     (2007/4/9)
  • その15「未来を知る」  
     (2007/4/16)
  • その16「テレパシー:遠隔知覚」  
     (2007/4/23)
  • その17「大道芸(1)」  
     (2007/4/30)
  • その18「大道芸(2)」  
     (2007/5/7)
  • その19「念写」  
     (2007/5/14)
  • その20「マンゴー樹」  
     (2007/5/21)
  • その21「テレキネシス」  
     (2007/5/28)
  • その22「法術」  
     (2007/6/4)
  • その23「うさぎとかめ」  
     (2007/6/11)
  • その24「立食パーティ」  
     (2007/6/18)
  • その25「寝床」  
     (2007/6/25)
  • その26「蜜蜂」  
     (2007/7/2)
  • その27「ゾンビ」  
     (2007/7/9)
  • その28「100円ショップ」  
     (2007/7/16)
  • その29「ジニー」  
     (2007/7/23)
  • その30「風船」  
     (2007/7/30)
  • その31「胡蝶の舞」 
     (2007/8/6)
  • その32「心筋梗塞」 
     (2007/8/20)
  • その33「サイコロ(1)」 
     (2007/8/27)
  • その34「サイコロ(2)」 
     (2007/9/3)
  • その35「サイコロ(3)」 
     (2007/9/10)
  • その36「サイコロ(4)」 
     (2007/9/17)
  • その37「落語手品」 
     (2007/9/24)
  • その38「高僧の話」 
     (2007/10/1)
  • その39「見えない人」 
     (2007/10/8)
  • その40「テレビマジック」 
     (2007/10/15)
  • その41「さくらさくら」 
     (2007/10/22)
  • その42「腹を切る」 
     (2007/10/29)
  • その43「カラクリ」 
     (2007/11/5)
  • その44「カラスと磁石」 
     (2007/11/12)
  • その45「その後」 
     (2007/11/19)
  • その46「カードを破る」 
     (2007/11/26)
  • その47「いたずら」 
     (2007/12/3)
  • その48「クリスマス」 
     (2007/12/10)
  • その49「新聞紙破り」 
     (2007/12/17)
  • その50「大トリ」 
     (2007/12/24)
  • その51「手品歌留多」 
     (2008/1/1)
  • その52「健康の秘訣」 
     (2008/1/7)
  • その53「失敗の巻」 
     (2008/1/14)
  • その54「モダクラ劇場」 
     (2008/1/21)
  • その55「メタボリック」 
     (2008/1/28)
  • その56「忘れられる」 
     (2008/2/4)
  • その57「狂歌」 
     (2008/2/11)
  • その58「タバコ」 
     (2008/2/18)
  • その59「バレンタインデー」 
     (2008/2/25)
  • その60「ヒトラーの贋札」 
     (2008/3/3)
  • その61「贋札」 
     (2008/3/10) 
  • その62「税金」 
     (2008/3/17)
  • その63「分からない人」 
     (2008/3/24)
  • その64「分からない人(2)」 
     (2008/3/31)
  • その65「数学」 
     (2008/4/7)
  • その66「サムタイ」 
     (2008/4/14) 
  • その67「マッチ棒」 
     (2008/4/21)
  • その68「落っことす」 
     (2008/4/28)
  • その69「変面」 
     (2008/5/5)
  • その70「ふりをする」 
     (2008/5/12)
  • その71「免許」 
     (2008/5/19)
  • その72「問題」 
     (2008/5/26)
  • その73「指が六本」 
     (2008/6/2)
  • その74「キリストの墓」 
     (2008/6/9)
  • その75「シニア」 
     (2008/6/16)
  • その76「現象の予測(1)」 
     (2008/6/23) 
  • その77「現象の予測(2)」 
     (2008/6/30)
  • その78「魔法の粉」 
     (2008/7/7)
  • その79「不思議に見えない」 
     (2008/7/14)
  • その80「ライジングカード」 
     (2008/7/21)
  • その81「マジック教室にて1」 
     (2008/7/28)
  • その82「マジック教室にて」 
     (2008/8/4)
  • その83「マジック教室にて」 
     (2008/8/14)
  • その84「マジック教室にて」 
     (2008/8/18)
  • その85「マジック教室にて」 
     (2008/8/25)
  • その86「ミルク」 
     (2008/9/1)
  • その87「牛肉」 
     (2008/9/8)
  • その88「お名前は?」 
     (2008/9/15) 
  • その89「ダフ屋」 
     (2008/9/22)
  • その90「金輪つなぎ」 
     (2008/9/29)
  • その91「スプーン曲げあれこれ」 
     (2008/10/6)
  • その92「ご挨拶」 
     (2008/10/13)
  • その93「アンコール」 
     (2008/10/20)
  • その94「バックミュージック」 
     (2008/10/27)
  • その95「興味の連鎖」 
     (2008/11/3)
  • その96「想像力」 
     (2008/11/10)
  • その97「スリーカードモンテ」 
     (2008/11/17)
  • その98「趣味道楽の勧め」 
     (2008/11/24)
  • その99「マイザーズドリーム」 
     (2008/12/1) 
  • その100「総理」 
     (2008/12/8)
  • その101「手品を始めた方へ」 
     (2008/12/15) 
  • その102「ロープを切る」 
     (2008/12/22)
  • その103「一億円」 
     (2008/12/29)
  • その104「初夢」 
     (2009/1/5)
  • その105「若葉マーク」 
     (2009/1/12)
  • その106「3本ロープ」 
     (2009/1/19)
  • その107「なんにもない時」 
     (2009/1/26)
  • その108「60人」 
     (2009/2/2)
  • その109「恐竜」 
     (2009/2/9)
  • その110「実説鼠小僧」 
     (2009/2/16)
  • その111「分からなかった」 
     (2009/3/2)
  • その112「ポーカーマジック」 
     (2009/3/9)
  • その113「松竹梅」 
     (2009/3/16)
  • その114「タイトル」 
     (2009/3/23) 
  • その115「タイトル(2)」 
     (2009/3/30)
  • その116「タイトル(3)」 
     (2009/4/6)
  • その117「二人羽織」 
     (2009/4/13)
  • その118「箱根山」 
     (2009/4/20) 
  • その119「神田祭」 
     (2009/4/27)
  • その120「手品の標語」 
     (2009/5/4)
  • その121「かぶり」 
     (2009/5/11)
  • その122「花はどこへ行った」 
     (2009/5/18)
  • その123「あらため」 
     (2009/5/25)

 


その117「二人羽織」 (2009/4/13)

 某所某発表会で久しぶりに「二人羽織」の演技を見ました。
 一人のお客を上げて、この人に羽織をふわっと掛けて正面を向かせ、演者が後ろに回って羽織の袖から両手を出し、その演者の両手で何かのマジックをやる。一応、そのお客が何かをやっているように見えるって寸法です。

 もともとこれはマジックではなく、お座敷での座興か、幇間芸だったのでしょう。基本的なコンセプト、と言うとおかしいけど、お座敷でのお笑いのポイントは、正面を向いた人が(実際は後ろの人の手で)例えば何かを食べようとする、それがうまく口に運べない。変なところに食べ物を持っていってしまって、口でそれを追っかけるが、鼻みたいなところに押し付けてしまって大笑い。などなど、うまく行かないってところが笑いを誘う、と言う余興でした。扇子でほっぺたを突いてしまったり、お猪口のお酒をこぼしてしまったり、実際は大変だったのでしょうね。「お座敷」で見たことなんかないけれど…。

 これをマジックへの応用を試みたのはどこのどなたか知りませんが、ステージのマジックとしてみた場合、「余興」と変っていろんな「コンセプト」があるように思いました。

 以下、面倒なので上がってもらった客を仮に「田中さん」とします。
 まずは「田中さんは全くマジックの素人なのに、これがうまくマジックを演じるってことで拍手!」とまあ、これが普通のやり方なのかもしれません。今回見たのもこの線を狙っているようでした。これは先に書いたお座敷余興とは全く違うコンセプトになっています。この場合は、実際には何も見えていない後のマジシャンが手だけでちゃんとマジックをやる、という見せ場もあるようです。
 しかし、この場合、田中さんの「立場」が難しい。田中さんには種は見えているのか?見えていて笑ってしまうのか、または田中さんにも種が分からないようにして不思議がらせるのか?つまり、“演じたマジシャン”(田中さん)自身が不思議がっていることをひとつのポイントにするのか、または逆に田中さんにマジシャンとしての表情を作ってもらうのか?
 この、田中さんの「表情」ひとつで、観客に訴えようとするポイントがガラッと変ってしまいます。

 次は「上がった客をマジシャンに見立てて、うまくやろうとするがおかしなところに手が行ってしまう。さっぱりうまくいかない、って事で笑いを誘う」と、こちらはもともとのお座敷コンセプトに近い見せ方です。しかしこれも、どのようにうまく行かないのか、どう見せるのか、など相当凝った練習が要りそうな?
 それに、なんとなく田中さんをおちょくっているような感じにもなってしまいそうで、せっかく上がってもらった人に悪いような気もします。

 ステージを見ていながらふと思ったのですが、こんなコンセプトはどうでしょうかね。
 二人羽織の二人組のほかに、もう一人本物のマジシャンを登場させるのです。そして「マジシャンがきれいに演じたマジックを、二人組が真似をするが、事ごとにうまく行かない、全部種をばらしてしまう」という線です。
 つまり、昔からある、二人でやるネタばらしマジック(一時、ドリフターズの加藤茶と志村けんがやってましたが…)を二人羽織でやるって訳ですね。

 まあしかし、どの線を狙うにせよ、羽織を着た客の「立場」と「表情」がキーポイントになることは間違いないわけで、これを急に上がってもらった斎藤さんにやってもらうってのは、かなり難しいことのようです。

 例えば、ナポレオンズさんあたりの一級プロにやって頂ければ、とっても面白いステージになるような気も致しましたが…。

その118「箱根山」 (2009/4/20)

 マジックランド主催の「箱根クロースアップ祭」は年に一度のお楽しみです。湯本のホテルに全国からクロースアップ好きが集まって、あれやこれやの二日間。アマチュアも超有名なプロも、ごちゃごちゃと一緒になって、世界トップクラスのクロースアップマジックを楽しむ時間です。
 例年、海外から著名マジシャンをゲストに呼ぶのですが、今年はイギリスからのマーク・メイソンと、フィンランドからのシモ・アルトのお二人。マーク・メイソンはレクチャラーとしても一流で、ユーモアと迫力あるレクチャーでは有りました。
 一方のシモ・アルトは、これはFISMの優勝者。賞を取ったベルのパフォームを引っさげての登場です。使ったコインも大小のベルも、みんな彼個人専用に作った特別製のもののようでした。ウーン、ここまでやらなければFISMトップは取れないんだなあ!って感じでした。
 日本からは名前も始めて聞くような若い人たちが何人か出場しましたが、これがみんな素晴らしくうまい!一時期のテレビのマジックブームが育てた俊才たちなのでしょう。マジックの世界も明らかに世代交代が進んでいる。誠にご同慶の至りです。
 昔のマジックを昔のようにやる、って人はここには来ません。ほかのコンベンションと違って若い参加者が多いのも特徴的です。
 著名なプロではふじいあきらさん、ドクターレオンこと坂井さん、ナポレオンズのボナ植木さんなどなど…。ボナさんのユーモアあふれるトークは絶品ですが、これはテレビでは役割分担の関係で殆どお目にかかれない。もったいないような気もします。
 とまあ、結構楽しませていただいた二日間ではありましたが、ワタクシなどが最近御用の多い老人ホームやケアセンター向きのネタはここには全く無縁です。アタリマエだ。後期高齢者のかたがた相手に、不可能なカード当てなんかやってみたってねえ。
まともあれ、「不可能なカード予言」などなど、いくつかの戦利品を担いでの下山とはなりました。よっこらしょ!
 
 さて、例によってマジックとは全く無縁な無駄話。
 「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」って、ご存知有名な馬子唄です。今回泊まったホテルの脇の旧道をしばらく上ったところに、今でもこの碑があります。
 しかし、この歌は不思議な歌です。だって、これはどう見たって箱根は単なる引き合いで、大井川が主役の歌ですよね。箱根の難儀な道を、馬を引きながら登っていく馬子たちが、大井川の歌を歌っていく、というのはどうもおかしい。と、かねがね思っていたところ、なにかの本でこの疑問が氷解しました。
 これはもともとは恋を歌った俗謡で、「越すに越されぬおもひ川」だったと言うのです。つまり、せつない恋の思いの川はなかなか越すに越されない、箱根の山はなんとか越えられるけど…。うん、これなら良く分かる。粋なものです。
 長い間歌われているうちに、いつのまにか大井川に転化してしまったのでしょうね。民謡俗謡などでは良くあることのようです。
 うん、“越すに越されぬ思い”か…。

その119「神田祭」 (2009/4/27)

 どうしてこんな名前がついているのか良く知りませんが、昔からある有名なマジックです。僕がご幼少のミギリ、マジックなるものを始めて見たときの、二代目天勝一座の演目の中にもありました。テレビなんかない時代だし、田舎町に本物のマジック一座がやってくるなんてことはめったにない、いやもう驚きの連続でした。という話は以前にもどこかで書いたな。
 さて、「神田祭」です。ステージ中央にすっくと立った太夫は長い二本のロープを持っている。天勝さんは確か和服でしたね。二本を合わせて中央を首にかけ、両手で夫々の側を二本ずつ持って、端っこはずっと長くたらしていたような気がします。
 昔のスタイルですからね。長々と口上よろしく、ご自分の体をそのロープで結わきます。それから会場から子供を舞台に上げ、その子供を太夫の前に立たせて、今度は一本ずつのロープでその子供を結わきます。
 さてさて二本のロープの両端を二人の後見に持たせ、再び思い入れたっぷりの口上のあと、裂ぱくの気合とともにその両端を引っ張ると、見事に二本のロープは二人の体をすり抜けてしまいます。会場はどよめきとともに割れんばかりの大拍手。とまあ、こんな演出でした。一種のイリュージョン的な扱いでしたね。
 いやあ不思議でしたねえ。こんなことがあろう事かあるまいことか。幼稚園に上がったかその前ぐらいか、幼児のワタクシにはその日の演目の中で一番不思議でした。

 その後めでたくモノゴコロついて、マジックの世界にかかわるようになってから、トリックを知って唖然としました。なあるほどなあ!ずるいことを考えるものだ!
 幼い頃から不思議だなあと思い続けていたことの疑問が氷解するってのは、目からウロコの面白さ!と同時に一種の落胆もありましたね。
 “知ってしまえばそれまでよ。知らないうちが花なのよ”

 このマジックの原理は、江戸の古い手品伝授本「珍曲たはふれ草」などにも出ているようですが、西洋で「おばあさんの首飾り」としても知られており、どちらが古いのかはよく分かりません。いずれにせよこのアイデアは応用が広く、サロンマジックなどでもきれいなシルクを何枚か使って演じられるのは、良くご存知のとおりです。

 さてではお得意の失敗談。
 某所某日。某氏との競演です。得意のロープとシルクの演目に続けて、やおら2本のロープと3枚のシルクを取り出します。何しろこのマジックはいつも大成功。気合とともにシルクがロープから外れて飛び散り、会場はどよめきで終わることになっています。
 それがこの日はなんとしたことか、エイッとばかりに2本のロープを引っ張ったら、ありゃりゃ!シルクは外れずにロープでしっかりと縛り付けてしまったではありませんか!こりゃまたなんとしたことか!って動揺しながら良く見ると、なんとなんと、種の部分の持ち方を間違えてた。せっかく種を作っておきながら、2本のロープを普通に持っちゃってたよ!これじゃあどうにも仕方がない。
 いくらずうずうしくたって、これは流石にカバーのしようがありません。いやま、悠揚迫らず丸めてしまいこみ、シャアシャアと次のマジックに進みましたけどね。ああ!

 え?いつも成功してるからって、“慢心”はいけないって?
 いやその…そろそろ来てるのかなあ? アルツ……なんだっけ?

その120「手品の標語」 (2009/5/4)

 手品をお勧めする標語なんてえものはありませんね。“格言“は多いけど…。
標語は、大概は飲酒運転やら薬物やら、なになにをするな、と言うのが多いようです。「注意一秒怪我一生」「飲んだら乗るな乗るなら飲むな」
 ともあれ、標語つくりというのは特殊な才能が必要なものらしい。コピーライターの才能なのかな?
 小学校の頃、読書週間とやらで、読書を勧める標語というのを作らされました。小学生にいきなり標語なんて言われたって、何をどうしていいやらさっぱり勘所がつかめない。みんなうんうんうなった挙句、自分も含めて、せいぜい「本をいっぱい読みましょう」的な、どうにもならないハシボウであったことは間違いありません。

 このときの最優秀作が
 「読書熱心もの知りはかせ」
 というものでした。これはアザヤカ。ピシッと来るね。
 そしてこれを作ったのが別段学業に冴えていると言うわけでもない、やんちゃないたずら小僧であったことにも驚かされました。本なんか読んだことなさそうなやつだった。
 ウン、こういう気の利いたものを作る才能には、読書熱心である必要なんかないんだな、と言うことも、この標語を読んで理解できました。
 しかしなるほど、標語というものはかように作るものであるのか、そしてあいつにはこんな意外な才能が有るのか、と感心したのを覚えています。

 もうひとつ、アッと驚いたパロディがあります。
 「今日も元気だタバコがうまい」
 と言う看板があったんだそうです。まあこれは標語と言うよりタバコの宣伝コピーですね。この「が」の点々をペンキで塗り消したやつがいる。お分かりですよね。
 「今日も元気だタバコかうまい」
せっかくの宣伝が見事に反宣伝になっちゃってる。これまたアザヤカな才能だ。
どうも自分にはそのような才能は皆無だな、と思っています。残念なことだ。

 ところでこのところ、世界的な不況で、派遣切りなど職を失う方が多いとか。コチトラは今は手品三昧の自由業。もともと職なんかないわけで、不況だろうが犯罪を犯そうが職を失うって事はない。なんとなく世間様に申し訳がないような気もするので、ここらでひとつ職を失った方への応援標語を、乏しい才能を絞って考えました。
ほら
 「元気にパチンコ明るい家庭」
 「今日もサラ金豪華なディナー」
 「孫と競輪帰りは屋台」

では最後にようやく手品の標語。得意のパクリでご機嫌を伺って…。
 「手品熱心いかさま博士」
 さあ、博士を目指そう。

その121「かぶり」 (2009/5/11)

 マジックの大会や発表会などで、演目が重なってしまうことが時々あります。アマチュアの会などでは、ある程度はやむをえないことでしょう。しかしそれも程度問題。先日のマジック大会のはひどかった。

 「神田祭」が二回、正確に言えば三回。
 二本の長いロープを舞台いっぱいに張って、人間を縛ったり、またははっぴを縛ったり…。縛っているモノが違うと言えば違うけど、客から見れば全く同じ現象が繰り返されてる。あ、またやってるよ!
 更にひどいのは「めおと引き出し」でした。大御所北見プロの至芸がトリに控えているのに、その少し前にクラブメンバーが殆ど同じ手順でこれを演じたりしていました。これは実に主催者の感覚を疑いましたね。
 いったいどういうつもりなのか?品評会のつもりなのか、超一級のプロの演技の前にヘタな見本を見せたかったのか? それとも前の演者では現象がいまひとつ分からなかったので、改めてこういう手品なんだよ、と、見せたかったのか?単に打ち合わせ不足なのか?ショーの演出に関する感覚が全くない主催者だったのか?
 それに、出演を依頼したプロにも失礼なことのようにも思います。
 えー?あれさっきやったじゃん!

 どこかの会のように、使うマジックテーブルまで同じものを避けるなんてのは、いささか行き過ぎかとも思いますが、シルクやロープなどのちょっとしたアクトがカブってしまうほどなら、それほどナーバスになることもないのでしょう。しかし、ひとつの演技の中心になる大ネタが何回も登場する、なんてのはいくらなんでもねえ。
 北見御大に出演依頼すれば、大御所のウリモノの大ねたが登場することは分かりきったことなのに…。それに、観客だってそれを期待しているわけだしねえ。
 落語だって前座と真打が同じ話なんて事はあり得ない。師匠!その噺さっき聞いたよ!

 ところで「めおと引き出し」ですがね。どうも僕には理屈が少し腑に落ちないところがある。二段重ねの引き出しの、下側に入れた玉が消えた。これは実に不思議だ。
 しかしそのあと、上の引き出しを出して、こちらにもないよ!と見せる。え?そんなの当り前じゃないの!下に入れたものが上になんて、もともと行くわけないよ!
 そもそも、これって二段の上側って、なんのためにあるの?いつもカラだよカラだよって見せるだけで、何にも役を果たしていないようだ!イヤ仕掛けの話をしているんじゃないんですヨ。あくまでも客から見ての話で!
 これってどういう理屈の手品なんだろうね?

 もっとも、北見プロの鮮やかな手さばきは、そんなササヤカな疑問なんか感じさせないような、いつもながら魅力たっぷりの華麗なステージではありましたが…。

 まあね、「“めおと”引き出し」なんだからね。少しぐらいワケ分からないところがあるのも当り前か…。

その122「花はどこへ行った」 (2009/5/18)

 「はなはどこへいった」で変換したら、「鼻はどこへいった」となってしまった。いや、それはどこにも行ってないんだ。別段…。

 さて、「花はどこへ行った」。ご存知キングストントリオ、PPM、ブラザーズフォーなどで歌われた名曲です。

野に咲く花はどこへ行く    野に咲く花は少女が摘んでいった
その少女はどこへ行ったの  少女は若者にとついで行った
その若者はどこへいったの  若者は兵士になって戦場に行った
その兵士はどこに行ったの  兵士はお墓に行ってしまった
お墓はどうなったの      そのお墓にはあの花が咲いたの

 先日ふとした拍子につけたテレビで、「2008ブラザーズフォー日本公演」というのをやっていました。これが実に感動的だった。
 かっての若さあふれる四人組は、いまやみんないいおじいさん。若さの替りにしわのあふれるお顔で、しかし年輪を加えたそれぞれ実にいい顔で、昔のままにギターやベースをかき鳴らし、昔のまんまの声張り上げて、懐かしい歌の数々を聞かせていました。

 グリーンフィールズ、アラモの歌、七つの水仙、さらばジャマイカ……。
 ま、いわゆる“なつメロ”ではありますがね。なんか思わず、涙が溢れてきたりして…。そして極め付けが「花はどこへいった」でした。もうボロボロ。
 あの頃ベトナム戦争の真っ最中。ジョーン・バエズの「ドナ・ドナ」や、ボブ・ディランの「風に吹かれて」なんかと共に、いわゆる“反戦歌”の代表的なものだった。
 日本では高石ともや、フォークル、そして岡林信康…。当時はフォークソングと言えばすなわち、「戦争反対」のメッセージを込めたものだと思っていましたね。その反戦デモで、学生寮で、そして夜の山上のコンパで…。よく歌ったなあ。ギターの上手な友達もいて。

 ブラザーズフォーも、聞いてるこちらも、あれからざっと40年。幸い兵士にもならずお墓にも行かずに、夫々しわも増えて同じ歌を聴いている。ああ!

 いまは戦場の花ならぬ、舞台の花をヘタな手つきで咲かせていたりして…。
 あれ?仕込んだ花はどこに行っちゃんたんだ?
 平和だなあ。いいのかなあ?

その123「あらため」 (2009/5/25)

 手品の重要な技法に、各種の「改め」があります。
ホラ、何にも持ってないヨ。こっちの手もカラだよ。この箱は、なあんにも入ってないよ!この変な袋もカラッポだよ!って、あれこれと心を砕きながら見せることですね。
 ところが、どうもこれを過剰にやる方が多い。客がそもそも疑っていないところに、おかしな手つきで紙幣の裏を見せたりするもんだから、かえって疑われてしまう。しかも、シャアシャアとさりげなくやればいいところを、どうしても肩に力が入ってしまって、空である事を懸命に納得させようとする。ほんとにカラッポだよ!そう見えるでしょ?

 この辺に関する先達の名言が有るのはよく知られています。
 「追われていないのに逃げるな」アル・ベーカー
 うまい言葉ですね。手がカラであることなんか、ワザワザヘンテコな手つきで見せなくたって、自然な形であれば客は疑いません。
 改めの余計な技法を覚えるより、パームした手がナチュラルになるような練習に時間を費やしたほうがよっぽど有効です。
 紙幣にせよコインにせよ、普段見慣れているものなら、それを改めるなんてのはかえっておかしい、って事に案外気がついていない手品師がいます。これは普通の1000円札ですよ!何にもシカケのない新聞紙ですよ!なんて一生懸命になって見せようとするから、え?普通のでないお金なんてあるの?なんて、余計な疑いを起こさせてしまう。
 昔からの教えられたとおりに改めて、それでかえって疑われていれば世話はない。日本では「藪をつついて蛇を出す」って、昔からある教えです。

 もっとも、普段見慣れていない、赤や黄色に塗りたくられた箱や筒なんかだったら、それはやっぱりちゃんと中を見せなきゃいけないでしょうけどね。
 しかしこれもねえ。全く見たこともないようなキンキラの箱や筒だったら、いくら何にもないヨと、気張ったところで、なにかあるんだろうなあ?ありそうにはみえないけど…って思っているのが大方のような気もしますがね?
 まあ、そう言っちまったら身もフタもないか。あ?フタに種があるって?そりゃそりゃ失礼しました。

 ところで、先ほどのアル・ベーカーの考案に「アルプロダクト」というシルクマジックがあります。ライス「シルクマジック大事典」などにも紹介されていますね。一枚の紙を表裏よく改め、くるっと丸めて中からシルクが出現する。これはトリックと言うよりも、「改め」の技法でしょうね。ちょっと角度には弱いけど、中々有効な方法ではあります。(これは「バルーンチップ」という名前で商品化されています)

 しかし、「余計な改めはするな」、との意味の名言を残した人が、「改め」の技法で名前が残っているのもなにか皮肉な感じもしますね。

「手品の周りで」は、ワンツースリーの123回で一旦一休みします。
週一回書きついで2年半になりました。ご愛読ありがとうございました。また
再開しますのでそのときはよろしく。


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